一般社団法人 日本整形内科学研究会 (JNOS)では、2020年11月28日土曜日、11月29日日曜日に完全オンラインにて第3回学術集会・第1回日本ファシア会議を開催しました。
今回は法人化後3回目の学術集会となり、メインテーマを『2020 And yet, it moves. ~それでも地球は動いている~』と設定して開催されました。(プログラムおよび『抄録集』はこちら)。
今回はコロナ禍の中、医療関係団体として徹底した感染拡大防止を行うことにつとめ、主催者側も1か所に集まることなく日本全国の個別の拠点から完全オンラインセミナーをスムーズに実施するとこができました。
学術局および学術集会運営事務局として、入念なリハーサル、発表者のスライド等発表資料の事前チェック(著作権、肖像権・個人情報、引用表示の適切さ含む研究倫理などに対するコンプライアンスチェック)によりオンラインで実施するに耐える資料作成サポート、そして希望者への学術内容アドバイザリー制度の積極的活用(学術用語や論旨アドバイス、イラストの作図サポート)、何よりも日々のJNOSウェビナーの運営ノウハウの蓄積(今回までに既に17回実施)、が成せたものと考えております。
本学術集会に参加された会員の方は専用サイトで当日の収録動画を視聴することができます(2020年12月6日公開済)
(著作権含む知的財産権、および秘密保持含む営業秘密上の情報の観点から一部の動画は編集・削除しています)。
2020年11月28日 (一日目)
大会長講演:
テーマ「整形外科学と整形内科学」
洞口 敬(JNOS 副会長・理事、日本大学病院 整形外科 診療准教授) 一般公開動画あり
特別講演:
テーマ「痛みとは-痛みの定義2020-」
小幡 英章(JNOS 理事、福島県立医大 痛み緩和医療センター 教授)
会長講演:
テーマ「fasciaが紡ぐ臨床・研究・教育、そして多職種連携」
木村 裕明(JNOS 会長・代表理事、木村ペインクリニック 院長)
会の初日のスタートは「大会長講演」「特別講演」「会長講演」「教育講演」と当会を取り巻く最新状況や本大会のテーマに関する講演が当会理事より行われました。
整形外科の歴史、整形内科学の必要性、国際学会による最新の痛みの定義、多職種連携による効果的な発痛源評価など非常に興味深いテーマが続きました。
【教育講演1】
テーマ「総合診療における整形内科学」
白石 吉彦(JNOS副会長・理事、隠岐広域連合立隠岐島前病院 院長)
【教育講演2】
テーマ「若手医師に対する整形内科教育」
並木 宏文(JNOS理事、地域医療振興協会 十勝いけだ地域医療センター)
続いては教育講演です。総合診療医に求められる治療方法や若手医師に対する整形内科学として教育方法について興味深い講演がありました。
【基調講演1】
テーマ「リハビリテーションおよび鍼灸臨床現場における整形内科教育」
銭田 良博(JNOS副会長・理事、株式会社ゼニタ 代表取締役社長)
【基調講演2】
テーマ「著作権を意識した解剖イラスト作成技術」
黒沢 理人(JNOS理事、トリガーポイント治療院 院長)
【基調講演3】
テーマ「エコ-描出技術の一般化を目指した学習方法~医師と理学療法士の連携を目指して~」
永野 龍生(JNOS理事、永野整形外科クリニック 院長)
【基調講演4】
テーマ「膝疾患に対するエコーガイド下Fasciaハイドロリリースの基礎」
谷掛 洋平(JNOS理事、谷掛整形外科 副院長)
【基調講演5】
テーマ「腰殿部痛に対するエコーガイド下Fasciaハイドロリリースの実際」
吉田眞一(JNOS理事、よしだ整形外科クリニック 院長)
1日の最後は5つの基調講演です。各理事が日々実践している興味深い内容の講演がありました。
2020年11月29日 (二日目)
JNOS活動報告
二日目の最初はJNOSの各組織、委員、ブロックから活動報告がありました。
一般演題(会員公募演題)
今回は一般公募演題として応募のあった、以下5件の発表がありました。
尚、講演後の厳正なる審査の結果、井野辺病院 総合リハビリテーションセンター 井野辺 純一先生 「後頚部圧痛、複視、めまいを呈し後頚部のハイドロリリースにて改善する症候群」と 畿央大学大学院 嘉摩尻伸 先生 「癒着モデルラットに対するハイドロリリースの影響」 が優秀賞に選ばれました。
<1>
【タイトル】頚椎症の診断後に慢性疼痛が2年経過しFascial Pain Syndromeが疑われた1症例
【演者】〇宮地 祐太朗、渡邉 久士、銭田 良博
【所属】株式会社ゼニタ<2>
【タイトル】整形内科学の観点を生かした鍼灸師の多職種連携治療の実践例
【演者】○佐藤公一1)、船橋徹至1)、銭田智恵子1)、逆瀬川雄介2)、渡邉久士2)、銭田良博1)
【所属】1)銭田治療院千種駅前 2)株式会社ゼニタ<3>
【タイトル】第5中足骨骨折と外果骨折を受傷した患者のROM制限に対してFasciaに対する発痛源評価と治療を実施し改善した一例
【演者】〇濟藤 惇、逆瀬川 雄介、渡邉 久士、銭田 良博
【所属】株式会社ゼニタ<4> <<<優秀賞>>>
【タイトル】後頚部圧痛、複視、めまいを呈し後頚部のハイドロリリースにて改善する症候群
【演者】〇井野辺 純一
【所属】井野辺病院 総合リハビリテーションセンター<5> <<<優秀賞>>>
【タイトル】癒着モデルラットに対するハイドロリリースの影響
【演者】○嘉摩尻伸1.2)、森拓也3)、額賀翔太3.4)、後藤淳1)、岡田圭祐1)、工藤慎太郎5)、河西謙吾5)、西田亮一1.6)、今北英高1)
【所属】1)畿央大学大学院 健康科学研究科、2)岸和田リハビリテーション病院 リハビリテーション科、3)奈良県立医科大学 医学研究科、4)阪奈中央病院 リハビリテーション科、5)森ノ宮医療大学大学院 保健医療学研究科、6)高の原中央病院 リハビリテーション科<6>
【タイトル】新しいFascia異常モデルの開発に向けて
【演者】○寺山奨悟、後藤淳、岡田圭佑、嘉摩尻伸、白波瀬未萌、西田亮一、祐實泰子、今北英高
【所属】畿央大学大学院健康科学研究科
2020年度JNOS研究助成制度 受賞者による指定演題
続いて2020年度JNOS研究助成制度 受賞者による指定演題発表が行われました。発表は以下の5件です。
<1>
【タイトル】関節内組織が膝前十字靭帯損傷の治癒メカニズムに及ぼす影響(Influence of intra-articular tissue on the healing mechanism of anterior cruciate knee ligament injuries)
【演者】〇金村 尚彦1)、加納 拓馬1)、村田 健児2)、森下 佑里3)
【所属】1)埼玉県立大学大学院 、2)埼玉県立大学、3)東京家政大学<2>
【タイトル】変形性膝関節症モデルラットにおけるFascia由来の可動域制限と低酸素の関係(Relationship between knee contracture and hypoxia-inducible factor in the fascia with knee osteoarthritis)
【演者】工藤慎太郎1)2)3) 、北野雅之2) 、北川崇2) 、川畑浩久1)2)
【所属】1) 森ノ宮医療大学 インクルーシブ医科学研究所、2) 森ノ宮医療大学大学院 保健医療学研究科、3) アレックスメディカルリサーチセンター<3>
【タイトル】超音波診断装置を活用した触診実習および成績判定に関する研究
【演者】平山 和哉1)、阿部 玄治1)、銭田 良博2)、小林 只3)
【所属】1)東北文化学園大学医療福祉学部、2)株式会社ゼニタ2)、3)弘前大学医学部付属病院総合診療部<4>
【タイトル】自己修復ポリマーゲル(ウイザードゲル)を使った、エコーガイド下ファシアハイドロリリースの練習用筋骨格パーツモデルの作成
【演者】○須田 万勢1)、渡邉 洋輔2)、貝沼 友紀2)、押本 康成3)
【所属】1)諏訪中央病院 リウマチ膠原病内科、2)山形大学 有機材料システムフロンティアセンター、3)ユシロ化学工業株式会社<5>
【タイトル】ハムストリング肉離れ既往歴における組織硬度及び振動覚の変化(Relationship between a previous muscle strain injury and tissue property /sensory function)
【演者】河合智則、髙本考一、尾藤何時夢
【所属】東亜大学人間科学部スポーツ健康学科柔道整復コース<6>
【タイトル】温熱刺激によるfasciaのエコー画像・fasciaの層別の温度・血流量・血管径の変化(Changing due to thermal stimulation in ultrasonography images of fascia, the layered temperature of fascia, and blood flow and blood vessel diameter)
【演者】渡邉 久士、銭田 良博
【所属】株式会社ゼニタ
第1回 日本ファシア会議(1st Japanese fascia conference)
今回は第3回JNOS学術集会と併催という形でファシアに着目をした第1回日本ファシア会議を開催しました。発表内容は以下の通りです。
<1>
【タイトル】Fasciaに対する実態・言語・歴史
【演者】小林 只
【所属】JNOS学術局長・理事、弘前大学医学部附属病院 総合診療部 学内講師<2>
【タイトル】Fasciaの基礎と臨床
【演者】今北 英高
【所属】JNOS理事、畿央大学大学院 健康科学研究科教授<3>
【タイトル】エコーガイド下Fasciaハイドロリリースの最新知見
【演者】木村 裕明
【所属】JNOS 会長・代表理事、木村ペインクリニック 院長<4>
【タイトル】Fasciaに対するエコーガイド下鍼治療
【演者】黒沢 理人
【所属】JNOS理事、トリガーポイント治療院 院長<5>
【タイトル】Fasciaに対する徒手療法と運動療法の基礎
【演者】辻村 孝之
【所属】JNOS理事、フィジオ/滋賀医科大学附属病院 学際的痛み治療センター<6>
【タイトル】Fasciaに対する物理療法の基礎
【演者】銭田 良博
【所属】JNOS副会長・理事、株式会社ゼニタ 代表取締役社長<7>
【タイトル】Fasciaに対するセルフケア・生活指導の基礎
【演者】山崎 瞬
【所属】JNOS理事、NPO法人インクルーシブケア 代表理事<8>
【タイトル】Fasciaに注目した手術手技
【演者】川島 清隆
【所属】熊谷総合病院泌尿器科 泌尿器科長
2020年度 JNOS研究助成制度・一般演題 授賞式
つづいて2020年度JNOS研究助成制度の対象研究に対する授賞式、および一般演題の優秀賞受賞者への表彰式が行われました。
総括
昨年度の第2回学術集会に引き続き、今年度もまた各講師の講演や、多職種の会員プレゼンテーションなどから、今後のJNOSの目指す方向が、色々な側面から共有、議論ができた非常に有用な場となりました。
今後も、今回のようにより深い情報交換を行うことにより、整形内科学、及びFasciaに関係する運動器疼痛および難治性疼痛等における診療・学術・教育・研究の発展に寄与してゆく所存です。
本学術集会の運営にご協力をいただいた賛助会員様を初め全ての関係者の方々へ、この場を使い感謝の意を表させていただきます。
当会の活動を、会員および非会員に広く周知するために、以下の動画を一般公開(Youtube)致しました。
- 第3回JNOS学術集会・第1回日本ファシア会議・大会長講演(2020年12月25日公開:Youtube JNOSアカウント リンク)
【演題】整形外科学と整形内科学
【演者】 洞口 敬(JNOS 副会長・理事、日本大学病院 整形外科 診療准教授)- 第1回日本ファシア会議・指定演題1 (2020年1月上旬公開予定:Youtube JNOSアカウント リンク)
【演題】Fasciaに対する実態・言語・歴史
【演者】小林 只(JNOS学術局長・理事、弘前大学医学部附属病院 総合診療部 学内講師)- 第3回JNOS学術集会・一般演題優秀賞(2020年1月中旬公開予定:Youtube JNOSアカウント リンク)
【演題】後頚部圧痛、複視、めまいを呈し後頚部のハイドロリリースにて改善する症候群
【演者】井野辺 純一(井野辺病院 総合リハビリテーションセンター)
日本整形内科学研究会 -JNOS-では、今回のような学術集会を始めとする場で、痛みに関する理解を深め、治療技術の発展の為、ともに研究を行う治療者、研究者を募集しています。詳細は「入会について」を参照願います。
尚、2021年度の第4回JNOS学術集会(大会長:吉田眞一)は、2021年11月27日(土),28日(日)に予定をしております(形式は未定)。